伝言ゲーム
『いつもの時間、あの場所で待ってる S』
机の中のメモを見つけたのは登校してすぐのこと。
志波の字に似てる。
でも、志波はこんなことしない。
いつもの時間とか
あの場所とか
私と志波の間に
そんな約束は一つも無い。
いたずら、だと思う。
そう思うんだけど
有り得ないんだけど
本人をつかまえて聞けばいいんだけど
普段の志波ならこんなことしないと思うんだけど
普段とは違う何かがあるんだとしたら?
そう考え出したら
会いに行かなきゃって思ってしまう。
昼休みは
図書室と
屋上と
中庭を探してみた。
けれど、いない。
放課後は
廊下を端から端まで行って
校舎の南と北の階段を下りたり登ったりし
屋上も見に行って。
グランドを見下ろしてみるけど
今は試験前。
部活は無いのでもちろんいない。
あと、行きそうなところ……
特別棟に行って
図書室
音楽室
化学室
なんかも覗くけど
志波どころか
誰もいない。
意識していない時は
よく姿を見かけたり
目があったりするのに
こうやって探すと
見つからないもんだな。
昇降口
中庭
裏庭
部室の前
グランドの周り
これで学校のほとんどの場所をまわった、はず。
やっぱりいない、よね。
もう下校時刻を大分まわっている。
帰っちゃったのかもしれない。
私も……帰ろっと。
あきらめて鞄を置きっぱなしにしていた教室に戻る。
その途中で数人の女子とすれ違ったとき
クスッと笑われた。
ああ……やっぱり、いたずら、だったんだ。
志波のファンと名乗ってる子たち。
なんでか私は厄介者らしい。
私だってあの人たちとあまり変わらないのに。
たまたま共通の友達がいるから仲良しで
たまたま家の方向が一緒だから一緒に帰るだけで
たまたま朝のランニングで時間やコースが同じだから一緒に走るだけ。
それだけなのに。
そう、たった、それだけなのに。
想っているのは私の方だけ。
志波はたまたま一緒にいてくれるだけ。
だから、私に意地悪しても、なにも良いことなんて無いのに。
……別に気にしないし。
これぐらいの意地悪、へっちゃら、全然平気。
グーって力を入れた手をブンブン振りながら
気持ちのモヤモヤも振り払いながら
ズンズン歩いて教室に戻った。
「あ、れ?志波?」
「遅い……」
「え?」
「どこ行ってたんだ?……帰るぞ」
「待ってて……くれたの?」
「さあな」
「む……どっち?」
「待たされたんだから、コーヒーぐらいおごれよ」
「うう……わかりました」
「じゃあ、行くか」
こういう事してくれちゃうから
ドンドン好きになっちゃうのに。
私が志波のことを好きで好きでたまらなくなるのは
全部志波のせいなんだから。
そうだよ。
ホント。
「じゃあ、ケーキは志波のおごりね」
「は……?」
「よし。さ、行こう!」
「あ、おい!」
「早くー!おいてくよ!!」
意地悪されても私の気持ちは変えられない。
志波のことが好き。
人の気持ちなんて簡単に変えることは出来ない。
そう知っているのに
志波に好きになってもらいたいなんて
志波の気持ちが私に向けば良いのになんて
願ってしまう。
意地悪してくる子たちより
私が一番たちが悪い。
確実に。




"お礼に代えて"
「Say my name. Say more.
」のSay-co様から頂きました、志波主SSです。
ブログの方で公開されていたのを頂いて参りました。い、いいの!だって「aikaさんへ」ってあったから!いいはず!
志波もですがそれ以上にデイジー好きな私(たぶん別ベクトルなんだけど)にとってはもう…もう!(言葉にならない)
とりあえずこのイタズラしかけたモブの女子どもにはプロレス技かけてまわりますとブログの方にはコメントさせていただきました。
そうでなきゃ密さまに密告してやる!デイジーイジメル悪い子はオラが許さねぇよ!!
「こんなのへっちゃらだもん」と強がる健気なデイジーに「…遅い」とか言いやがるKY志波にも若干イラっとしました。
んっとにお前はな!誰のせいで遅れたと思ってんだ!ケーキくらいじゃ足りないよ!もう責任とって結婚しろ!でもそんなところも好きだ!!!
実はこのお話には別設定があるらしいのですが、それは私の胸にだけしまっておきます…!もぎゃああ!(内なる叫び)
本当に、ありがとうございました!