……落ちつかねえ。
日課のトレーニングの最終セットを終えて、シャワーを浴びてからベッドに入ったがもう何時間も眠れずにいる。暗闇の中、目が冴えて仕方がない。
机の上のカレンダーに、小さくしるしをつけてあった。そういえば、年末にこのカレンダーを買って最初に開いたのがこのページだった。いつ忘れてもおかしくはないと、自分の記憶力のことをそう評価している。
けれど、この部屋に入ってきたおふくろがこの印に気づかないように、もし気づかれても何の印だか分からないようにしておかなければならなかったので、逆に自分がこれは何の印なのか忘れそうになった。
もともと俺はこういうことは苦手なんだ。
……人の誕生日だとかそんなものを覚えるというのは。
その印の日が、いよいよ明日だ。
苦手だ出来ないとばかりも言っていられない。昨年の秋、俺の誕生日の日、あいつがしてくれたことを思えば。
「志波くん、お誕生日、おめでとう!」
満面の笑みで(いつもの通り力の抜けた、見ているこっちまで気が抜けるような顔だった)そう言って、「頑張ってプレゼント、選んだんだよ。気に入ってくれるといいなあ」ときれいに包装された包みを差し出してきた。
今までも、なぜか俺の誕生日を知っていて、毎年いくつかは知らない女からなにかをよこされた。その場では一応受け取り、食い物であれば手作りでなさそうならば食べたが、名前も知らない女からの贈り物かと思うと、積極的に使う気にはならなかった。
しかし、あいつからのものは違う。なにより、名前も知らない女ではないし、むしろ俺自身は積極的にかかわりあいたいと思っている相手だ。
あいつからのプレゼントは純粋に嬉しかった。俺の誕生日を覚えていてくれただけでも、かなり。
そのお返し、というのもなにか俺の柄じゃないような気がしたが、俺もあいつの誕生日になにかやりたいと思った。それでたっぷり二週間は悩んだ。他人の誕生日についてこんなに考えたのは初めてだった。
そして、いよいよ明日となって今度はいつどうやって渡すべきか、柄にもなく悩んでいる。
さりげなく、目立たないように渡すには、いつがいいだろうとか、どこで……、どうやって渡そうかとか。あまり人前でというのも、なんだか気恥ずかしいような気もするし、かといって人気のないところに呼び出すなんていうのも、果し合いじゃねえんだし、と思う。
あいつも、俺の誕生日のときにこんな風に考えただろうか。こんな夜も眠れないほどにとは言わないが、少しでも俺のことを考えている時間があったというだけでも、満たされるような気がする。
柄じゃねえ、らしくねえと言い訳ばかりしてはいるが、結局はそういうことだ。あいつが、少しでも俺のことを考えていてくれたら、それでいいと思う。
うとうとしたかと思ったら、もう朝だった。
ベッドの下に隠していたその包みを取り出して、カバンに突っ込み、俺は登校した。
……いろいろ考えていても仕方がない。今日、会ったらすぐに渡そう。
あいつ、どういう顔をするかな。
頭の中をよぎったなんだかおかしな覚悟に、俺は自分でも珍しくくすりと息を漏らした。
そんな風に歩いていたら。……見つけた。あいつだ。
「おい」
「あっ、志波くん、おはよう!」
「ああ。おはよう」
「朝から志波くんに会えるなんて、運がいいなあ」
「そうか? 俺も、運がよかった。お前に会えて」
「えっ? なんでどうして?」
「これ。渡そうと思ってたから」
誕生日、おめでとう。
そんな風に心から思えるお前と出会えたことが素直に嬉しいと感じている。
2009/02/04
aikaさまへ! おたんじょうびおめでとうございます!!
    
"お礼に代えて"
「恋煩い」のゆうき様から頂きました、志波くん話です。デイジーにプレゼントを渡すお話を頂きました!
もちろん、ここでプレゼントをもらっているのは私でなくデイジーさんなんですが。
これ頂いた時ほど「二次元に行きたい」と思った事はなかった…!(待て)
ゆうきさんは言うまでも無く赤城主の女神さまなのですが、志波くんもめちゃめちゃカッコイイのです。(そしてデイジーのかわいさが神がかっている)
「もう私二次元に行きます!でもってゆうき志波と恋します!!」と駄々こねてゆうきさんを困らせたのは私です。
いや、だって、仕方無いです。こんなん頂いたらもう次元を飛び越えるしか…!!
カレンダーにお母さんにわからないように印つけたりとか、
プレゼントをこっそりベッドの下に隠したりとか、
そんなカワイイ事をしているのに、何だかカッコイイ!!くそ、大好きだ!!
そして、こんな高校生志波をくださったゆうきさんにも大感謝です!!ていうか、好きです!!(ちょ)
本当に、ありがとうございました!
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