2008年8月(推定)〜2009年1月までのブログネタ。と、プラスおまけ。
「妄想」カテゴリ作る前に色々書き散らしていたもの。(何てカテゴリだよ)
◆甲士園で優勝した夜。(志波主。もちろん)
深夜。12時もとっくに過ぎたころに、携帯電話が鳴った。
ディスプレイにある名前を見て、私はすぐに通話ボタンを押して、耳に押し当てる。
「志波くん!!」
――海野、か?
聞きなれた、低い声。少し掠れている気がする。
その、心地良い低音の声を聞いたとたん、また目が熱くなってきた。鼻が詰まって、目の奥がツンとして、うまく声が出ない。
今日、羽ヶ崎学園野球部は甲士園で優勝した。
甲士園に行って応援したかったけど、自分も吹奏楽部の最後の合宿があったりで、結局、うちのTVの前で、お母さんと二人で祈るみたいにして応援しながら見ていた。
最後、9回裏、審判がアウトと大声で叫んだあと、私はTVの前で大泣きした。
嬉しいのはもちろん、でもそれだけじゃなくて何だか涙が止まらなかった。
――志波くんに会いたい。そう思った。
おめでとう、と言いたいのにうまく言えない。代わりにしゃっくりみたいな変な声が出てしまい、電話の向こうで彼が笑うのがわかった。
―どうして海野が泣いてるんだ?
1対2で、負けていたのを、ホームランで返して逆転した志波くん。
優勝が決まって、他の部員の子たちと抱き合って喜んでいた志波くん。
応援スタンドに深々と頭を下げてお辞儀していた志波くん。
取材する記者に「応援してくれる皆さんと、受け入れてくれたチームメイトと…、背中を押してくれた友人のお陰でここまでこれました」と、オトナみたいに落ち着いて答えていた志波くん。
思い出したら、涙がどんどん溢れてくる。嬉しいやら寂しいやら誇らしいやら、とにかく色んな気持ちがいっぺんに湧き上がってどうしようもない。
ただひとつ、それでもブレない気持ちはあるのだけど。
でも、とにかく泣いていてもはじまらないので、ひっく、うえぇっく、とか言いながら、私はなんとか「おめでとう」と言った。
「……よ、かった、ねっ…ほん、とっ、よかっ、た……っ!」
どもりながらの私の言葉に、志波くんは「サンキュ」と言った。それから、
―今の「おめでとう」が一番嬉しい…って、言いすぎか。俺。
と、ちょっと照れたように付け足した。
「……しばくん」
あのね、私、ホントは一番言いたい言葉は違うんだ。おめでとう、だって、もちろん心からそう思ってるけれど、でも、それはあまりにも自分勝手だから、困らせるんじゃないかと思って、言えないの。
夜は静かだ。まるですぐ傍で囁くみたいに、志波くんの声が耳から体にしっとりと響く。
―礼を、言いたくて。お前のおかげだから。ありがとう。
こんなに気持ち良く響いて、心があったかくなる「ありがとう」、初めてだ。
ああ、どうしよう。それなのに、私は志波くんを困らせることばかり考えてる。
「お疲れさま」とか「ゆっくり休んでね」とか、気の利いたこと、全然言えないでいる。
―遅くに悪かったな。でも・・・どうしても今日、おまえの声が聞きたかった。
ほら、そんな事いうから。言っておくけど、志波くんだってよっぽど鈍感だよ?
私のわがままをどんどん歯止めのきかないものにしていく。
「…あのね志波くん」
―…どうした?
「はやく…帰ってきてね」
会いたいよ、と、言ったあと、電話の向こうは数秒間静かになった。ああやっぱり困らせてしまった。
でも。
でも困らせるけど、心のどこかで期待もしていた。優しい志波くんは、困っても、それでも最後は、笑って。
―明日中には帰る。絶対。
溶けそうに低いあまい声がそう言って、私は嬉しくて笑った。笑って「待ってるね」と言った。私って呆れるくらい単純でゲンキンな女だと思う。
カーテンを開けて窓の外を見る。しっとりと静かな夏の夜。もう一度朝が来るのを待って、私はあの人に会いに行く。
◆「彼女の手を取って自分のぽっけに入れちゃう〜針主編〜」
「はぁーーっ、さむいねぇーー!!」
「…あぁ?まーな。つか、オマエ、この寒いのに薄いカッコしてるからだろ」
「うーん…こんなに冷えると思わなくて…、ハリーはあったかそうだね」
「コレか?この間、ショッピングモールで買った」
「ふぅーん、カッコいいね、!よく似合ってるよ。あったかそうだし」
「そ、そうか?ま、まぁオレさまチョイスだしな!ハハハ!!」
「ふふっ…・っくしゅ!はぁ、寒い…。せめてマフラーか手袋してくれば良かったぁ…」
「手、冷たそうだな…」
「うん…すっかり冷たくなっちゃった…」
「…………あ、あのよっ…」
「ん?なぁに?」
「いや、えーっと、その…」
「…どうしたの?」
「…………あ、あのさっ!て…っ」
「あっ!自販機あった!ねぇハリー、あったかい飲み物買ってもいい?手もあったまるし」
「…………………あ、あぁ!い、いいぜ別に!よし、行くぞ自販機!!」(がっくり)
◆「彼女の手を取って自分のぽっけに入れちゃう〜佐伯主編〜」
「…うわっ、さむーーい!やっぱり夜は冷えるねー!!」
「お前…何でそんなカッコしてるわけ?ま、いいけど。何とかは風邪ひかないっていうし」
「なによぉ…瑛くんはあったかそうなコート着ちゃって、いいなぁー!ね、ポケットだけでもいいから貸してよ」
「なっ…ば、バカ!何言ってるんだよ!」
「……何でそんな怒るの?」
「お前が変な事言うからだろ!!ほんっとカピバラな!!」
「カピバラ関係ないじゃなーい!!なによー瑛くんのケチ!!」
「まさか…お前、誰にでもそんな事言ってるんじゃないだろうな?ダメだからな?お父さん命令だぞ」
「はいはい、言わないけど。でも、お父さんポッケ貸してくれないんでしょ?けちんぼお父さんだ」
「け、ケチって…そういう問題じゃないだろ!」
「あーもー寒いよー!お父さんがケチでポケットにも手を入れさせてくれないから凍えそうだよー!」
「……………あああもう!わかったよ!!ほら!!」
「わーーい!!ありがとうーー!!って、え?どうして手握ってくれてるの?」
「特別オプションだ、ありがたく思え」
「……なんで瑛くん、顔赤いの?」
「うるさい!黙ってろ!」
「いたっ!もう〜!すぐチョップするの反対〜!!」
◆「彼女の手を取って自分のぽっけに入れちゃう〜古森主編〜」
「うぁーっ、寒いっ!風もキツイし…古森くん、平気?」
「オレは…平気」
「お昼間はあったかいと思ったのに…やっぱり手袋持ってくればよかったぁ…」
「……冷えるか?」
「うん、ちょっとだけ。でも大丈夫だよ!私、ジョーブに出来てるから!」
「でも、手、冷たそうだ。服も、寒そうだし」
「あはは、もうちょっと着込んでくればよかったよねー。…古森くんはあったかそう、そのコート」
「これは…前から、持ってんだ。前いたところは、寒かったから」
「そっか…私も明日からは厚めのコート着ようっと」
「あ、あの…」
「ん?なぁに?」
「その……手、貸して」
「え?かして、って?……もしかして、手、繋いでくれるって、こと?」
「ん…キミが、イヤじゃなかったら」
「嫌なわけないけど…でも、冷たいよ?古森くんの手も冷たくなっちゃう」
「そんなの、気にしね。…かして。ポケット、入れてたら、あったかいから」
「えっと…じゃあ、お願いします。…ありがとう、古森くん。ホントだ、あったかいね」
「…うん。キミの家着くまで、こうしてるから」
◆針谷家妄想。
・テストの結果が返ってきました。(ハリーとハリ母)
「ちょっとコウ!!あんたこの間の試験の点数、あれ、どういうことなの!!」
「げっっ!お袋!!」
「げ、じゃないよ!!ったくねぇ、アンタ、ギターばっか弾いてんのはいいけど宿題ちゃんとやってんの!!?それと、おふくろじゃなくてお母さんでしょーが!!!何べん言ったらわかんのよ!!」
「あああもう、わかってるってば、うっせぇなぁ……」
「わかってないから言ってんでしょーがっ!!うっさいって何?どの口が言ってんの!!これっ、この口かっ!?」
「いだだだだだだだだだっ!痛ぇ、痛ぇってっ!!つ、次はやる、ぜってぇやる!!」
・デート中、お年寄りに席を譲りました。(針主)
「ハリーって意外に親切だよね」
「意外にってなんだよ。別に、こんなんフツーだろ。年寄りに優しくすんのはアタリマエだ」
「思ってても、中々出来ないことだってあるよ?スゴイと思うな」
「ふーん、そんなもんかぁ?そんなん考えたこともねーなー」
・針谷家、ある日の夕食。
「今日ね、コウが彼女連れてきたのよ、父さん」
「ばっ、ちげーよ!か、彼女じゃねぇって!!」
「へぇ、そりゃ見たかったなー」
「結構カワイイ子だったわよ。ああいう子なら仲良くやれそうだわ、私」
「だから、ちょっと待てってば!」
「あら何?もしかしてまだ告白してないの?そんなのんびりしてたら別の男に取られちゃうわよ〜?」
「コウは意外に奥手だもんなハハハ」
「うっっせぇよ!もうほっとけって!!」
「こら!食べながら大きな声出すんじゃないの!行儀悪い!!」
「いてっ!」
「でも、コウちゃんが結婚するなんて、すっかり大きくなったんだねぇ、この間まで私に泣きついてきてた子がねぇ…」
「はぁぁ!!!け、け、けっこんんん!!?ば、ばあちゃん、何言ってんの!違うから!」
「いやでもな、一応準備はしておいた方がいいぞ、コウ。父さんたちの時も急に結婚決まったからな、準備が大変で…」
「あー、そういえばそうだったわねぇ。親戚に挨拶とか結構大変なのよねぇ」
「だーかーら!!ちょっと待てって!!何で話がそんな飛んでんだよ!!」
「でも、そんなん言っててあの子にふられちゃったら身も蓋もないけどね、あーはははは!」
「まぁそれはそれでいいじゃないか。失恋は人を成長させるっていうし、そんな笑ったら悪いだろ、あはははは」
「おや、コウくんあの子にふられちゃったのかい?まぁ、かわいらしいお嬢さんだったのに、もったいない…」
「あぁーーもう、うっせぇよ!!誰が失恋だっ、縁起でも無ぇこと言ってんじゃねぇオヤジ!!」
「こぉら!オヤジって何よ!お父さんでしょうがっ、このバカ息子っ!!」
「いてぇっ!」
・ハリーのおばあちゃんとデイジー
「ハリーのおばあちゃんて優しそうで、何だかかわいいよね」
「ん?まぁそうだな。昔っからすっげぇ優しかった」
「そうそう、この間お話したとき、『それでヒドリはいつごろなの?』って言われたんだけど、ヒドリって何だと思う?」
「……………………………き、気にすんな」
「え?でも」
「い い か ら っ !」
◆はばたきマーケット!(ハリー)
「はい!というわけで、今日のゲストは、今、人気急上昇中のバンド、レッドクローズから、ヴォーカルのハリーさんに来て頂きました〜!!おはようございまーす!!」
「どうも、お早うございます!今日はよろしくお願いします」
「今回は、先日リリースされた新曲、「only you」についてお伺いしたいと思いまーす!この曲は、実はインディーズ時代から良く歌われていたそうですね〜」
「はい。高校の時に、作った曲で…。これはライブでしか歌うつもりはなかったんですけど」
「何でも、ファン投票で、この曲のCD化が決まったと伺ってますが?」
「そうです。お手紙も、メールもたくさんいただいて…そこまで言われたら、やるしかないなって」
「この曲は、ファンの皆さんの間でもとても人気だそうですね〜!では今回は、皆さんが待ち望まれていたCDリリース、というわけですね!」
「今回、こういう形でこの曲を録音出来たのは、ファンの皆さんのおかげです。これを機会にたくさんの人に聞いていただければ嬉しいです」
「ところで、この「only you」というのは、ちなみに誰のことなんですか?」
「えぇっ…!い、や、それは、その」
「えーっと、情報によりますと、現在奥様でいらっしゃるあかりさんのことではないかと」
「なっ!だ、誰スか!そんなの言ってんのはっ!!」
「レッドクローズ、イノこと井上さんからの情報ですvv」
「…あ、あんにゃろ、余計なことを…っ!」
「ちなみに、奥様のあかりさんとは、高校時代に出会ったそうで…しかも、ハリーさんは愛妻家なんですよねー」
「はぁっ!?そ、、それは、別に関係なくてっ…!!」
「そんな、甘酸っぱい恋心を歌われた「only you」、どんな曲かとっても楽しみですね〜〜♪」
ナレーション:CM後は、レッドクローズ、ハリーさんへのFAXを紹介しちゃいます!!何やらトンデモナイ人物からFAXが届く!?かも!!
◆クリスマスパーティにて(志波主)
「あ、志波くん!」
「……お前、その皿。取りすぎだろ、全部食えるのか?」
「え?…うーん、どれも美味しそうだからはりきって取ってきたんだけど、やっぱりちょっと多かったかな?でもデザートのケーキも取りに行きたいんだけどなぁ〜」
「食べきれなかったら、残りは俺が食べてもいいぜ。まだ何も取ってないし」
「え?本当?…あ、そうだ!じゃあこれ、二人で食べよう?えぇっと…あっち!あっちの椅子二つ空いてるから…」
「あ、あぁ」
「…どうしたの?あ、嫌いなものとか入ってる?」
「いや、そうじゃなくて…」
「……あ!ご、ごめんね!一緒に、なんて勝手に決めちゃって…。そ、その志波くんが嫌じゃなかったら、だけど」
「嫌なんかじゃない。…それ貸せ。お前が持ってたら落としそうだ。…あっち、行くんだろ?」
「…うん!あとね、それ食べたらね、ケーキも一緒に見に行こうね!」
「あぁ、わかった。…何だか嬉しそうだな?」
「えへへ、だって志波くんと一緒だもん。志波くんがいてくれたらケーキ争奪戦も負けないよね!」
「…なるほど。そう来るか」
「え?なぁに?」
「いや。…俺も、お前と一緒にいられて良かったって話。……ケーキ、楽しみだな」
「うん!…あ、そうだ。志波くん、メリークリスマス!今頃になっちゃったけど」
「…メリークリスマス」
◆親友天地と乙女デイジー
「……あ」
2年生の教室がある方の廊下で、小さな後姿を見つける。何人か似たような女子生徒はいたけれど、それが先輩だって、僕にはわかる。
以前ならためらいなく声をかけたけれど、今は少し違う。うまく言えないけど、何故か一度考えてしまうんだ。いいのかなって。
僕でいいのかなって。今、行っても大丈夫かな、「ジャマ」にならないかなって。
だってさ、もしもその時「あの人」も同じタイミングで先輩に声掛けようとしてたら、あるいは先輩がそうしようとしていたら。
…初めはさ、ビックリしたけど。でも先輩の気持ちもわかるよ。だって僕だってもし自分が女だったらきっと同じように好きになったと思うんだ。それくらいカッコ良い人だって僕にもわかるから。
先輩の背中よりもっとずっと向こうに、背の高い人影が見えた。あの人は、先輩には気が付いていないみたいだった。ずっと、憧れていた。今でも尊敬してる。
…だから、先輩の気持ちはわかるんだ。
別に、問題ない。憧れの人と、たぶん家族以外では一番大好きな女の子である先輩が恋人同士になるというのは。……それを、応援出来るっていうのは。
ほんの一瞬止めた足を、僕は無理やり進めて、先輩に近づく。小さな、頼りない背中。
「せーんぱいっ!何ぼーっとしてんの?」
「…わっ、あ、天地くん!?ビックリしたぁ…」
「だって、ビックリさせたんだもん。…それより、こんな所でボーっとしてちゃダメでしょ?志波先輩、行っちゃうよ?」
「そ、それはそうだけど…」
背は早く伸びてほしいけど、今はこの身長で良かったとほんの少し思っている。
だって、きっと志波先輩よりも近くで先輩の顔を見られるだろうから。…今だけは。
「ほら!早く行って!みすみすチャンスを逃すのは僕が許さないから!」
「ちょ、ちょっと天地くん…!」
迷いながら、それでも背中を押せば向こうに歩いて行く先輩は、ああやっぱりあの人が好きなんだと思った。
「…まったく、世話のかかる先輩なんだから」
背中から、手が離れたその一瞬に感じた痛みを、僕は独り言で何とか誤魔化した。
オマケ。デイジーは海野あかりちゃんで。
◆「彼女の手を取って自分のぽっけに入れちゃう〜志波主編〜」
「ひゃあぁ、さむーい!まだ風冷たいねー」
「そうだな…平気か?」
「うん!志波くんは?寒くない?」
「俺は…あぁ、少し寒いかもしれない」
「えっ!ホント!?マフラー貸してあげよっか?ピンク色だけど」
「…貸してくれるなら、こっちがいい」
「えっ、手…は、でも私今日、手袋してないよ?」
「あぁ、わかってる。これでいいんだ」
「あのでも、私の手、冷たくなぁい?」
「…俺と手つなぐの嫌か?」
「ううん、イヤじゃないよ!でも、余計寒くないのかなって…」
「こうしてれば、あったかくなれる」
「…ふぅむ、志波くんがいいなら、いっか。…えへへ、志波くんの手、あったかいね」
「お前の手は小さいな」
「そりゃ、志波くんの手よりは小さいよ。…志波くんって私の手のこと、いっつも『小さいな』って言うよね」
「そうか?小さいだけじゃないぞ。小さくて柔らかくてかわいい。…好きだ」
「へっ!?な、何、急に…」
「ちなみに、好きなのは手だけじゃないから」
「も、もう志波くんってば!」
意外とハリーが多かったなーと。ハリ連載書いてた時期だったからですね、きっと。
そしてぽっけに入れる志波主編は、何故してなかったのだろうかと思ったので。