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【朝の挨拶】
 
 
  
朝、通学途中に出会ったクラスの子と一緒に「はばたき学園」の門を通り抜ける。まだまだ始業には余裕のある時間で、人の流れも、のんびりゆっくりしていた。朝の乾いた空気は好き。変な例えだけど、新しい感じがする。 
 
「ねぇねぇ、昨日のあれ、見た?Red:Cro'z 出てたやつ!」 
「え?出てたの?どうだった?かっこよかった?」 
 
友達は、このはばたき市出身のバンドに夢中なのだ。私は、名前を知っている程度で(しかもほぼ彼女からの受け売りの情報だ)それほど詳しくはないけれど、同じ街出身の有名人と言うと、何だかそれだけで誇らしい。 
隣を歩く友達は、目を輝かせてあったりまえじゃん!と声を大きくした。 
 
「もうもう!テレビから目が離せなかったよぉ〜!心臓ドキドキしっぱなしだった!あのね、今度ライブあるんだってー!」 
「そうなんだ。じゃあ、生で会えるね」 
「そうなの!でも、チケット取るの大変だからさー、しかも試験近いから親には渋い顔されちゃいそうだし…、ね!うまくチケット取れるように、アンタも祈っててね!」 
「もちろん」 
「待ってて〜!私のイノ〜!!」 
 
朝からハイテンションな友達と、そうやっておしゃべりに夢中になっている時、突然、背中に何かがぶつかった。 
ぶつかったというよりも、ぶつけられた?とん、と、はっきりとその感触がわかる強さで、でも絶対に乱暴じゃない、むしろこちらを気遣うような感じで。 
つまり、背中に手を添えられたような、そんな感じで。 
 
「……あ」 
「おはよう。朝からにぎやかだね」 
 
振り返ってその存在を確認した途端、どきんと心臓が跳ねる。横の友達も気が付いて、おはようございます!と元気よく挨拶した。その人は、やわらかな笑顔で、同じように「おはようございます」と返す。 
 
「君は?」 
「…ぇ、はぃ?」 
「挨拶。朝あったら何て言うの?」 
「え、えっと…!」 
 
おはようございます。 
簡単なことだ。もっともっと小さな子供だって出来る、簡単な、でも基本の朝の挨拶。 
それなのに、どうしてこんなにも、言葉がつっかえてしまうのだろう。…相手が先輩だっていうだけで。 
そんな優しい目をして、わらいかけないでほしい。 
 
「…お、おはよう、ございます」 
「うん。おはよう」 
 
先輩は、私の挨拶を聞いて満足そうに微笑んでから、何事か言いかけ、けれど、どこかで「会長!」と声がかかったのでそれも中断されてしまった。 
 
「…それじゃあ僕は先に。…またね」 
 
先輩が去ってしまってから、隣の友達はにやにやとイジワルい笑みで私を眺めていた。 
 
「…挨拶くらいでキンチョーしすぎ。顔真っ赤だし」 
「べっ…別に、緊張なんて…!赤くなんて…!」 
「もぉぉぉぉ、かわいいんだからっ!でも、紺野先輩ならゆるーす!イノほどじゃないけど、先輩はカッコイイもんね!」 
「やっ、やめて!大きな声で言わないで!」 
 
 
 
それに、私にとっては『イノ』よりも先輩だもん。カッコイイとか、そういうのじゃなくて…いや、それもあるかもだけど。とにかく、そういう事。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
2010/04/11 Blogより。紺野玉緒先輩で妄想。 
とにかく玉緒先輩に夢を見ている。そして珍しく自覚アリなバンビ。2ndのデイジーが天衣無縫に鈍感だったので、バンビはどんな女の子かなと想像していました。 
呼ぶ時に「紺野先輩」なのか「玉緒先輩」なのかは、未だにわからない。 
  
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